ドラマ「美賊イルジメ伝」でみる物語の時代背景と文化(第16代仁祖)

イルジメ(一梅枝)はもともと中国の明末期の短編小説に出てくる主人公です。

その後、小説が朝鮮に輸入され第23代純祖時代の文人/詩人のチョ・スサム(趙秀三)によって『추재기이(秋齊紀異)』という人物小説として記されています。当時の下層階級の人々に関心をよせ彼らの生活の様子を71人の登場人物を通して記した著作です。

イルジメは46話(人)目に登場しています。

 

 

イルジメのキャラクターとドラマの内容

○イルジメ登場の時代背景

もともとのイルジメ(一梅枝)のキャラクターは明(中国)の盗賊ナリョンがオリジナルで、財宝を盗んだ後、梅の花一輪を描いて残したとするところからきている。朝鮮にはちょうど中国の明が清に変わるころに輸入されたとされ、朝鮮国内での“イルジメ”の話の広がりはその頃の時代を背景にしていると思われます。明(1368年~1644年)の末期は朝鮮では李氏朝鮮王朝第16代仁祖の時代です。

ドラマの中でイルジメが幼少のころ清で過ごした時の清の将軍として出会い、後に起こる丙子胡乱を防ごうとした相手が清の2代目皇帝太宗ホンタイジ)です。このあたりのエピソードはドラマ上の脚色ですが、当時の中国と朝鮮の関係は史実です。中国の変遷が少し複雑ですが、当時の明末期は今のモンゴルに近い地域(モンゴル~満州あたり)にはヌルハチによってできた女真(満州)の国家の後金が勢力を拡大していました。この後金が清の前身国家です。この部分はモンゴルの歴史にもなっています。 これに対して明は漢民族の国家です。ちなみに“べん髪”や“チャイナドレス”と知られる衣装は満州族の文化です。

 

○何が違う?中国・清と朝鮮の関係

ドラマにも出てくる丙子胡乱(へいしこらん1636年~1637年)は清が朝鮮へ進撃をしたもの。これを契機に李氏朝鮮と清との関係が決定的になったとされる。1636年後金のホンタイジが2代目皇帝として即位し、国名を“清”に変更したが、その即位を朝鮮が認めなかった。従来より中国と朝鮮は冊封関係にあったが中国側の支配体制が変わってしまった。李氏朝鮮の建国以来、明に対して冊封関係を行ってきており、度々朝鮮北部の越境周辺を脅かす満州族に対しては“北魏”として軽蔑していたため『親明排金』政策を崩さず、清からの臣従要求(冊封関係)を拒否していた。

それに怒ったホンタイジが兵を率いて朝鮮に侵攻し、仁祖率いる朝鮮軍を撃退、40日余りの篭城でねばりをみせた仁祖だったが、ついに降伏した。この時「三跪九叩頭(さんききゅうこうとう)の礼」といわれる臣下の礼を清のホンタイジに行い、許しをこうという屈辱を受けることになる。同時に「三田渡の盟約」という和議を結びこの内容の遂行が後に昭顕世子にからむ王族と朝廷の疑惑へと発展する。(詳しくは→こちらで

そしてこれ以降、李氏朝鮮は清との冊封関係を結び日清戦争が終わるまで続くことになる。この第16代仁祖は王としての功績はほとんど残っていおらず、軍を強化したという程度でしょうか。。。次の第17代孝宗は父の雪辱を果たすために『北伐』をかかげ軍備の強化をすすめていった。この時代“北伐論”が官僚の中にも急速に広まり李氏朝鮮後期の政策や党派に少なからず影響を与えることになる。

そのころ日本は、、、

日本は江戸時代初期のころです。ちょうど鎖国政策を開始したころでだった。実際は長崎の出島、琉球王国、対馬を仲介として若干の交易は行っていたため朝鮮との交流もあった。イルジメが日本に行くのも可能ということです。

 

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