ドラマ「黄金色の私の人生」でみる韓国の財閥とスプーン階級

韓国ドラマでは登場人物、社会設定としてよく財閥が出てきます。韓国社会にとって財閥は切り離せない社会構造となっているためです。この「黄金色の私の人生」にも財閥と後継者の財閥3世(チェ・ドギョン)とスプーン階級(韓国の格差を表す言葉)が背景(設定)となりドラマのテーマにもつながるものになっています。ドラマ中での人物関係は必ずと言っていいほど、企業グループ創業者=会長(祖父)、経営者=社長(親)、財閥3世=後継者(孫)が定番設定です。

黄金色の私の人生2

 

ナッツ姫ことチョ・ヒョナ氏から知る財閥と財閥3世の家族、社会事件

実社会でも財閥3世はよくニュースにもなり、最近では日本でも知られる”ナッツ姫”こと趙顕娥(チョ・ヒョナ)氏が話題となっていました。また、前朴槿恵政権のチェ・スンシルゲート事件で有罪となったサムスン電子の副会長李在鎔(イ・ジェヨン)氏も財閥3世です。

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ナッツ姫とは大韓航空リターン事件で当時大韓航空の副社長だったチョ・ヒョナ氏が出されたナッツを原因としてパワハラを行ったことでついたあだ名ですが、それと同時に韓国では父親の「娘の教育を間違えた」との謝罪が注目され、財閥3世への世襲・世代交代、問題行動に関心が集まることとなりました。

現在の韓国社会や経済は事実上、財閥によって支えられているといっても過言ではなく、韓国の主要企業は財閥のグループ系列会社が多く、韓国国内の国内総生産の7割(2011年)を10大財閥が占め、国内の富のは7%のエリート階層で独占されているとも言われています。

ちなみにサムスン・現代(ヒュンダイ)自動車・SK・LG・ロッテが5大財閥、10大財閥にはこれに現代重工業、GS、韓進、ハンファ、斗山が入ります。この中の韓進がチョ・ヒョナ氏の一族の財閥です。

ナッツ姫(チョ・ヒョナ氏)の経歴、家族、子供への批判と国民感情

ナッツ姫(チョ・ヒョナ氏)は韓進グループの財閥3世でナッツリターン事件の2014年当時はグループ会社の大韓航空副社長という地位にいました。その後、事件の責任をとって辞任していますが、懲役10ヶ月執行猶予2年の判決を受け釈放。2018年3月には韓進系列会社KALホテルネットワークスの社長に就任し経営に復帰していますが、同年4月妹のチョ・ヒョンミン氏の“水かけ事件”を機に解任。その後、一族での密輸事件に関与したとして召喚、最近では夫や子供にDVを行ったとして夫から告訴されています。(写真右:妹チョ・ヒョンミン氏、左:本人チョ・ヒョナ氏)

韓国の財閥は一族が系列会社で役員を務めることが世襲されており、その世襲年齢も財閥3世に関しては異例の早さとなっています。ナッツ姫/チョ・ヒョナ氏は1999年25歳で入社、2013年31歳で役員(大韓航空副社長)になっています。妹のチョ・ヒョンミン氏は24歳で入社、26歳で役員(JINエアー)、弟のチョ・ウォンテ氏は27歳で入社、30歳で役員(現大韓航空社長)です。

ナッツ姫/チョ・ヒョナ氏の経歴・家族

氏名:チョ・ヒョナ/趙顕娥
生年月日:1974年10月5日 ソウル特別市
:父-チョ・ヤンホ(韓進グループ会長)、母-イ・ミョンヒ
兄弟:弟-チョ・ウォンテ(現大韓航空社長)、妹-チョ・ヒョンミン(元KALホテルネットワーク代表取締役)
家族:夫-パク・チョンジュ(整形外科医、2010年結婚)、子供-双子2男(2013年生まれ)

夫のパク氏は小学校の同級生で現在、チョ・ヒョナ氏に対して離婚訴訟、暴行で告訴しています。また2013年に生まれた双子の息子はハワイで出産しアメリカ国籍を取得していることから兵役逃れではないか、との批判を受けました。

「黄金色の私の人生」の登場人物とスプーン階級

この財閥と一般人との格差がいわゆる韓国の「スプーン階級(수저계급론)」といわれるもので、ドラマの中の社会背景や人物設定に欠かせない要素となり、セリフや人間関係にも反映されるほどです。

主役のソ・ジアンは土のスプーン(階級)から抜け出そうと努力し奮闘しますが、自分の努力だけでは状況を好転できない(階級から抜け出せない)現実に絶望と失意を覚えることでドラマが展開していきます。これは現在の韓国の若者の状況をよく表していて「ヘル朝鮮」という造語がうまれるほどです。

そのスプーン階級は「金・銀・銅・土のスプーン」で表現されます。親の職業や経済力によって社会的地位が決定され、その後の人生が決まる、本人の努力では社会での階層が上昇することはないことを象徴する言葉です。西洋文化で言う「銀のスプーンをくわえて生まれる (裕福な家庭に生まれる)」から派生してできたもので、韓国の食事で使う銀のスプーン(은수저ウンスジョ)が基になっています。(銀のスプーンは元々昔の王族が毒見判断のために使っていたもの)

ソ・ジアンとチェ・ドギョンのスプーン階級

ドラマの中でソ・ジアンの父親ソ・テスは事業に失敗し土のスプーン階級になったことで、家族に負い目を感じています。その親や家族を助けるために”正社員”になることが階級を上げるための切り札です。この土のスプーンは親の経済的援助は望めず、逆に親を養わなければならないレベルとされています。対するチェ・ドギョン一族は財閥=金のスプーン階級です。

  • 金のスプーン:資産20億ウォン(2億円)以上  年収2億ウォン(2000万円)以上
  • 銀のスプーン:資産10億ウォン(1億円)以上  年収8000万ウォン(800万円)以上
  • 銅のスプーン:資産5億ウォン(5000万円)以上 年収5500万ウォン(550万円)以上
  • 土のスプーン:資産5000ウォン(500万円)未満 年収2000万ウォン(200万円)未満

※銀のスプーンと銅のスプーンが上流層と中間層を分ける基準となっています。土のスプーンがいわゆる貧困層に属する。

このドラマの制作には現在の韓国社会の社会構造と国民感情がうまく反映されていて、これが視聴率40%超えでどの世代にも支持された要因といえます。

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