ドラマ「チャングムの誓い」でみる李氏朝鮮の医療機関と医女

 

李氏朝鮮の宮中の医療機関には大きく3つあります。その1つがよく王の具合が悪いときに登場する“御医(オイ)”がいる「内医院(ネイウォン)」です。宮中の最高医療機関。王と王族、宮中の医療や薬剤に関することを担っていた機関です。

恐らくチャングムは“医女(ウイニョ)”と思われますのでこの内医院に所属していたはずです。内医院には16人官吏と20人前後の医女で構成されていました。(医女には官職はありません。他の宮女とは違っていたようです。)第9代成宗の時代には医女は内医女・看護医女・初学医女の3等級にわけられました。内医女は現代の女医のようなもので、診療にも従事していたようです。皇后や皇太后の診療も可能で、チャングム(長今)の記述に王妃の産後のことがあるのはそのためと考えられます。

もともと医女制度は、儒教の影響が強かった李氏朝鮮では、女性が男性に肌を見せるをためらったため王族や両班の女性たちを診察したり治療する医官が必要とされたことに始まります。これは庶民も同様で重病になっても医者にかからない女性が死亡するケースが多かったためで、“医女制度”によって女性が女性の患者を診ることができるようになったのは画期的なこととされています。

第3代太宗が済生院に命じて公奴婢から選ばれた女の子に医薬や鍼灸などを教えたことが始まりとなっています。この試みは需要も多く好評だったため同じように選ばれた13歳以下の女子を養育しました。この医女制度は第4代世宗の時代には完成したとされています。医女は薬房妓生ともよばれ一牌(イルペ)という妓生の中では最上の位が与えられました。(“妓生”は李氏朝鮮の階級では最下層の奴婢と同じ七賤の職業の一つです。)時には犯罪者の女性の体も見なければならなかったため両班や中人の女性は成りたがらなかったため公奴婢から選ばれたようです。

更に医女は庶民へ薬を処方し治療する「恵民署(ヘミンソ)」にも配属されました。内医院の医女に欠員が出ると恵民署から登用しました。男尊女卑の激しい時代に女性が活躍できる職業だったようです。

※内医院・典医監・恵民署の3つを合わせて“三医司(サミサ)”といわれる医療機関。王朝の医療関係は六曹のうち吏曹に属した。

御医(オイ):王の主治医とも言うべき存在でまさに医官の最上位。ただ医官はあくまで階級としては“中人”なので御医になれば正三品の位が与えられ両班になれた。この上に管理職がある。

恵民署:医療機関の1つ。民衆に対して医薬を供し、診察を行う。医学生・医女の教育機関。

典医監:(チョニガム)医療行政の中枢機関。王室、高官の治療と薬剤の管理。医療行政、医科試験の業務を担っていた機関。

 



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