ドラマ「太陽を抱く月」でみる李氏朝鮮の儀式:求蝕の礼(日食月食の時)
ドラマ「太陽を抱く月」(原作では「太陽と月」)では、先日(2014年10月8日)の月食と関係するような自然現象をうまく歴史ドラマとして取り入れています。
まさに昔の朝鮮では太陽は王(君主)、月は王妃あるいは臣下と考えられていました。そして具体的なエピソードとして『日食』がドラマの中に出てきます。
その日食の日を堺にドラマの展開が起こるのですが、その時に描写されていた“求蝕の礼(クシクのレイ)”とは何ぞや?ということで、ちょこっと解説です。
◎求蝕の礼(救食禮:구식례)
この救蝕の礼は朝鮮で古くから行われていた儀礼(祭祀)の一つです。
朝鮮時代の天体現象はまだその原理が解明されていないこともあり、天が災いを起すとして恐れられていた。
またその原因として王の行いがうまくいかない時(政治が隆盛しないとき)は日食が起こり、王妃の行いがうまくいかない時は月食が起こるとされていた。
太陽が象徴するのは王(君主)、月が象徴するのは王妃あるいは臣下と考え、特に日食は臣下が王を侵害するものとして天変地異の中でも最も恐ろしいものと考えられた。そのため日食の時には王が臣下を従え儀礼を行い、月食のときには王妃が臣下を従え儀礼を行ったとされている。
時代によって儀礼のやり方は若干の違いはあるが、基本的にはその天体現象が終わるまであらゆることを自粛し、祈祷を行うのもだったようである。
その日は自身の行いだけでなく刑の執行や動物のと殺も取りやめになった。
儀礼は正殿の月台(儀式を行う場所。正殿の外側の上下2段の正方形の石段。)で白装束(喪服)を着て香をたき祈祷することで行われた。
また朝鮮後期になると白装束ではなく淺淡服(천담복:3年の喪が明けた後にきる水色の日中服)で行たことが記録されている。
日食月食に関わらず、その災いを消滅させるために官吏達がドラム(月食の時は鉄や銅を使った楽器)を打って日(月)の光が出るまで鳴らし続けた。
これは王が戦いに勝つように楽器で景気づけを行う目的で行われたようである。逆に一切の楽器を鳴らさないこともあった。
国の儀礼としては重要なことだったらしく、世宗のころには日食の予想時間が15分すれたという理由で担当官吏が房で打たれるという罰を受けたとの記録がある。その後、世宗は予測の正確さを期すために観測システムの改善に着手している。