「宮廷残酷史」でみる仁祖の屈辱と政治

李氏朝鮮時代の特徴に『朋党政治（ほうとうせいじ）』がある。これは政治的な思想や利害を同じくする者同士が派閥に分かれて論争をする政治体制をいう。

仁祖のころは西人派が主要勢力。

それもそのはず、前国王の光海君をクーデター（仁祖反正）によって廃位させ、直系ではない綾陽君（のちの仁祖）を王位にした主力党派。

ここから西人派が政権の主役になる。

もともと李氏朝鮮の党派は第14代宣祖のときまでは勲旧派と士林派に分かれていた。 （>>>李氏朝鮮の党派の成り立ち）

第9代成宗のころより主流となっていた士林派が、宣祖即位の時に勲旧派を一掃し政治の中心となる。

西人はその士林派が1575年に政権の人事権をめぐり意見が対立した際に西人派と東人派に分裂したのが始まり。

その後1591年に西人派は一時、世子冊封問題で失脚し、台頭した東人派は粛清した西人派の扱いをめぐって意見が対立し北人（強靭派）と南人（穏健派）に分裂する。

1606年再び宣祖後の後継者問題が発生し、その頃に政治の中心にいた北人派が光海君（宣祖の庶子二男）を押す大北派と永昌大君（宣祖の嫡子長子）の正統性を説く小北派に分裂する。

第15代光海君時代は大北派が優勢だったが、1623年クーデター（仁祖反正）により西人派と綾陽君（のちの仁祖）が政権と王位を掌握した。

仁祖と西人派はクーデターの後、大北派の粛清を行い、これによって北人の勢力は小北派の一部を除いてほぼ消滅する。

そして、西人を主とし南人を副とする党派体制を確立する。西人は保守的で国外の情勢に疎く“華夷思想”（自国が最も優れ、周辺諸国は低劣との思想）はを持つ者が多かった。

結果的に親明排金主義の政権だった。

その体制は考宗時代も引き継がれたが1659年考宗の服喪期間が問題となり、この論争に勝利した西人は以後第18代顕宗の時代から15年間にわたり、東人から分裂した南人を退け政権をにぎる。

この西人と南人の党争が第19第粛宗に引き継がれる。（>>>派閥党争 西人vs南人）