歴史ドラマでみる韓国の「宮廷料理」と王の食事
王の食事の話がでたついでに、韓国の食事について説明してみようと思います。
「チャングムの誓い」で有名になった韓国の宮廷料理ですが、有名な“水刺間(スラッカン)”はいわゆる王の食事を作る台所のこと。
宮中の料理を作るのは『焼厨房(ソジュバン)』といわれる部署。
その中で内焼厨房(ネソジュバン)と外焼厨房(ウェソジュバン)、生物房(セイムルバン)に分かれており、王や王妃の食事を担当したのは内焼厨房で王と王妃の寝殿に近いところあった。
王の食事のことを“水刺(スラ)”と呼ぶためその調理場を水刺間とよんだ。
その他の外焼厨房は宮廷内の宴会の料理を担当するところ、生物房は通常の食事以外のデザートや茶菓子等を担当した。
李氏朝鮮時代の食事
階級による食事の違いと基本形
李氏朝鮮時代は階級が徹底していたので、その階級によって食べられるものに格段の差がありました。
(階級制度については→こちら)
主食と副食で構成され、その配膳の仕方を「飯床(バンサン)」といい朝と夕の膳の基本となっていた。昼は点心(チョムシム)といわれ麺やお粥で軽くすませることが多かった。
階級によっておかずの数が決まっており、そのおかず数にご飯とスープ(汁物)、キムチ(漬物)、鍋(煮込み)、醤類(調味料)がそえられる形式が基本となる。
○王(王族)の食事
宮中で暮らす王族の食事は十二楪飯床(シビチョブバンサン)と言って12品が基本。
楪(チョブ)とはおかずを入れる皿のことで十二楪はおかずが12皿(種類)あることを意味している。料理の構成は、
【基本料理】 ①パッ(ごはん)2品、②クク(汁)2品、③チゲ2品、④チム(煮物/蒸物)1品、⑤ジョンゴル(鍋)1品、⑥キムチ3品、⑦ジャン(調味料)3品
【おかず】 ①ピョンユク(片肉/ゆで肉)1品、②ジャン(煎/衣をからめて焼いたもの)1品、③フェ(刺身)1品、④ジェリム(煮付け)1品、⑤グイ(焼き物)2品、⑥ナムル(温野菜/和え物)1品、⑦センチュ(生野菜/酢の物)、⑧チャンアチ(佃煮)1品、⑨チョッカル(塩辛)1品、⑩チャーバン(干物)1品、⑪卵料理1品
《各階級の品数》
○両班の食事(支配階級) 両班の基本の膳は九楪飯床あるいは七楪飯床。よほど大臣クラスでないと九品のおかずは食卓にはあがらない。
○中人の食事(専門職) 両班より多くてはいかなかった。基本のおかずは七品か五品。
○常人の食事(農業/商業/工業) ほとんどが農民で、基本のおかずは三品。五品を越えてはいかなかった。
○賤民の食事(最下層/奴婢) 1人ずつのお膳はなく、大きい食卓を囲むようにして食べた。
★王の一日の食事
王は基本的に1日4回の食事を取っていた。
①初朝食(チョジュバン):早朝、起きてすぐにお粥の膳を食べる。 ②朝水刺(アチムスラ):午前10時の朝食。12品のフルコース十二楪飯床を食べる。 ③点心(チョムシム):正午過ぎに菓子、餅などを軽く食べる。(昼食の位置づけ) ④夕水刺(ソクスラ):夕方5時に12品のフルコース十二楪飯床を食べる。(朝とは異なるメニュー)
王の食事の特徴は、食事は健康を維持するだけではなく世間の事情を確認するための場でもあった。使われている食材の出来具合を確かめることで、状況を確認していた。
現在の韓国料理の定食の原型は両班の食事をもとに商業的に確立させたものといわれる。