「太陽を抱く月」の歴史的背景をドラマから読み解く

 

『太陽を抱く月』ではあまりにも真実味がありそうなドラマだったため、冒頭の注意に「フィクションであり歴史上の特定の時代や人物が登場するものではない。」との断りを入れるほどでした。

しかしまったくの架空の設定とも言えず、ドラマに登場する“星宿庁”は実在した官庁です。服装や役職、慣習から李氏朝鮮時代というのは間違いないですが、ドラマ中のエピソードや随所で語られる事柄から、その元になったであろうおおよその時代設定は推測できます。

ではどの時代か以下の条件から推測していきます。

 

ポイント1:役所から推測(星宿庁・観象監・活人署)

先にもふれましたが、李氏朝鮮時代に“星宿庁”は実在しその存在は初代太祖~第11代中宗まで続いた。

またヨヌ(ウォル)が活人署に送られる場面があり、この活人署が存在したのは第7代世祖~第21代英祖まで。すでにこの2つを合わせると第7代世祖~第11代中宗に絞られる。

また1466年の第7代世祖のころこれまでの「書運観」が「観象監」に名前を変更し、第10代燕山君のときには「司暦署」へ第11代中宗の時に「観象監」に戻っている。

これらのことから、可能性として残るのは第7代世祖、第8代睿宗、第9代成宗、第11代中宗となる。

 

ポイント2:家族関係と朝廷の勢力図から推測

【ドラマの設定】

主人公フォン(世子)の父は王の成祖。成祖は母親の大妃ユン氏とその外戚を朝廷から排除しようとしていた。

ユン氏一族は「王の脅威になる」ことを理由に異母弟を殺害し、その後それを理由に成祖をけん制している。朝廷内は大妃ユン氏を後盾とする外戚中心(ユン氏一族)の派閥と儒教を重視し規律を守ろうとする派閥(ヨヌの父兄)があった。

ドラマの中で“学士を動員して。。”という「学士」がでてきますが、この人たちは儒教を学び解釈を進言する人達。特に王は儒家としてお手本となるべき存在であった。さらに大妃ユン氏はフォンが王になった後も大きな権力を持ち外戚の勢力を維持しようとしている。またフォンには異母兄と妹がいて、その兄を差し置いて世子の座にいる。

 

【史実】

第7代世祖:正当なかたちで王位にはついていない。もともと王族ではあったが王位の継承はなかった。よって世子時代がない。

第8代睿宗:世祖の次男で、兄(桃源大君)の早世により王位継承を得て世子になる。王位につくものの1年数ヶ月で早死。
第9代成宗:世祖の長男桃源大君の次男。王位継承順位は3位だったが、先王の早死により王に指名される。この時先王の息子は幼過ぎる、兄の月山大君は病弱との理由で王位がめぐってきた。突然のことで世子時代はない。
第11代中宗:成宗の次男。兄の第10代燕山君の廃位により王に担がれた。

 

【比較】

○大妃ユン氏が成祖の異母弟殺害→睿宗が即位したころ叔父の亀城君(第4代世宗の4男の次男)は朝廷の要職についており、後に領議政(最高大臣)にまでなる。本来王族は政治には関与しないことが通例であったが、その例外ぶりに脅威を抱いたといわれる。成宗が即位してすぐの1470年に亀城君が王位を狙っているとの弾劾をうけ流刑になる。
○朝廷内に派閥争いがある→世祖以降、勲臣派と士林派という2つの党派の勢力争いがあった。特に成宗と燕山君のときに激しかったといわれる。成宗は士林派を登用し、燕山君は勲臣派を登用した。
○大妃ユン氏が2世代にわたって権力を掌握→第7代世祖の正妻の貞喜王后ユン氏は息子睿宗、孫成宗の治政初期に睡簾政治によって政治に関与している。ドラマの中で陽明君が(大王)大妃ユン氏に会話の中で「おばあ様も摂政をやっていた頃は、、、」という言い方をしている。
○異母兄がいる→成宗の場合は直の兄が月山大君だが、その兄を差し置いて自分が王になった。

 

ポイント3:王と王宮

フォンの父、成祖が政務を行っているのは康寧殿(カンニョンジョン)といわれる寝殿

康寧殿が寝殿としてあるのは景福宮(キョンボックン)。この景福宮を王宮として使用したのは初代太祖~第14代宣祖まで。この間第3代太宗が離宮として昌徳宮(チャンドックン)を建てている。

一方フォンが王のときに使用していたのは昌徳宮と思われます。確かドラマの中でボギョン王妃が王を尋ねて退出する際、“熙政堂(ヒジョンダン)”と掲げられた場面があったような。。。熙政堂は昌徳宮王の寝殿です。寝殿とは王や王妃が日常生活をしていた場所で、王妃はこの寝殿より前にある王が政務(政治)を行う場所には行くことができなかった。

成宗は昌徳宮を正宮にしていたため、これも共通するところです。

ちなみに先代の睿宗は景福宮で亡くなり、その場で貞熹大王大妃(第7代世祖の正室)が者山君(後の成宗)を次期王に指名したため、景福宮にて即位が行われた。

この中で唯一、世子時代があるのが睿宗ですが、これらの状況から考えると第8代睿宗第9代成宗あたりが時代背景の可能性が高くなります。つまり成祖が睿宗、フォンが成宗をもとにしたフィクションではないかと推測できます。

 



サブコンテンツ

このページの先頭へ